白神クラブ

筑波大大学院世界遺産専攻2年外崎が運営しています。

白神クラブ 第2回ツアー報告

 

2016年4月初め、今回も西目屋村にお邪魔しました。

今回レクチャーとガイドをお願いしたのは白神マタギ舎さん。現役最後のマタギの工藤光治さんが代表を務めていらっしゃいます。

マタギ舎の皆さん、気さくでユーモアのある方で、面白く興味深いお話をたくさん聞かせていただきました。その中で少しですが、ツアーの様子を紹介いたします。

 

1日目は工藤光治さんの自宅にうかがって、クマの毛皮の敷物の上で(!)、工藤さんのお話を聞きました。

マタギの1年は、猟、山菜採り、キノコ採りなどで回っていく。年中猟をしているわけではないそう。

それに、猟はとても難しく、いつでも”授かる”(獲物を獲るとは言わない)ことができるわけではないとおっしゃっていました。

山菜でもキノコでも、マタギは決して全部を取ることなく、三分の一程度しか採らないのだそうです。

動物であれ、山菜、キノコであれ、時期がよいとき(毛皮がふさふさの時、美味しい時、など)にしか採らず、その時期が終わったらすぐにとるのをやめてしまう。

クマを授かった時も分け前は、経験が違おうが、年齢が違おうが、みんな同じ。猟の分担なども皆同じで、これはアイヌの思想だとのこと。

規律を守り、山の神を大事にし、山の神が見ているからと自分を律して暮らしてきたのがマタギだとのこと。

 

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2日目のトレッキングはあいにくの雨模様でしたが、工藤茂樹さんと小池幸雄さんの案内で山に入りました。

人数が12人だったため、12人の子供のいる山の神さまを怒らせないため、お人形を作り、13人いると示します。

輪かんじきも見せていただきました。
全部手作りです。

ブナは3年ごとに実をつけ、7年ごとに豊作の年が来るそうですが、近年は気候変動の影響があって、不作の年が続いていたそうです。2・3年前に豊作の年があったので、豊作の年まで時間が掛かるようになってしまっているとのことでした。

動物の痕跡として見つけられたのは、

ニホンザルの食痕

ニホンカモシカの足跡

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ニホンザルのフン

ノウサギのフン

・テンのフン

ニホンカモシカの食痕 ・・・などなど、雪の中でもたくさんの動物たちの生業がうかがえました。

下山中にはスキーウエアなので、雪の斜面を滑り降りたりしました。

 

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ほとんどの参加者が初めての参加だったこともあり、白神山地と西目屋、そしてマタギについて学び、それぞれが有意義な時間を過ごせたようで良かったと思います。白神山地では世界遺産になる前のようにマタギの方がたが自由に山に入ることができません。やはり山に自由に入れないことが、私たちが山との関係性を築くことを阻んでいると私は感じました。世界遺産になったことでそれまで受け継がれていた、それこそ縄文時代からの山との関係性が失われそうになっていることに悲哀を覚えます。現代社会のなかではマタギという生業はいずれ失われてしまうものなのかもしれませんが、世界遺産という制度がそれを早めてしまったように感じられて、複雑な思いに至ります。

自然保護とは本来どうあるべきかを考えさせられました。現代社会では、自然との関係性を作ることも保つことも難しい中、私たちが挑戦し続けなければならない師匠の姿がそこにありました。

学会報告

こんにちは。
筑波大学世界遺産専攻D1の外崎です。

2016年3月 生態学会@仙台


この学会では、社会学系の自分にとっても勉強になる発表が多くあり、とても刺激になりました。

東日本大震災の影響については、今広範囲で大規模な工事が行われていて、災害による自然の調査の他に、人為的な影響をどう評価するかという指摘が数多く出されていました。また、市民や自然保護活動を行っている方々からは、貴重な自然地域が災害によって消失したとみなされ、工事が進んでいる現状が報告されました。

市民科学と研究者がどう恊働すべきかという話題では、同じプロジェクトに携わっていても参加している地域の人々と研究者、行政では目標や認識が異なっていることを理解しておく必要があるということでした。
市民側のニーズを明らかにしておくことが必要であることや、専門でない方々が楽しく続けてくれるように成果やメリットを見えるようにしなければなりません。
また研究者側ではプロジェクトを長く継続して維持することが難しいため、継続して行ってくれる主体に移行して、研究者はアドバイザーになる形がいいとの指摘もありました。

また、文化財に比べて、自然遺産や生物多様性、保護地域などの普及啓発・拠点の整備は遅れているという指摘もありました。
福島県只見町のブナセンターや福井県里山里海湖研究所など、新しい自然系の博物館や教育研究拠点も増えてきているものの、地域にそのようなミュージアムがない場合も多く、ない場合に市民や研究者の拠点がなく困っているという現状も報告されました。
そのような拠点施設が地域にないことによって、人材育成ができない、人材不足が起こったり、生物多様性を守る計画を作っていても計画のみで実行まで至らないことも多々あるようです。

ポスター発表でも有用なコメント・議論をたくさんいただきました。白神山地での自然と文化を考えている身としては、白神山地を自然遺産ではなく文化遺産としてみたときはどんな見方ができますかとの指摘は新たな視点をいただくことができました。

自然と文化両方を共に考えていくときに、いま活発になってきている「地域学」がもっと自然面についても考えていくと良いのではないかと感じました。文化遺産の博物館と自然遺産の博物館というように分けてしまうのではなく、両方を扱う地域学がメインとなるような地域の教育研究拠点施設ができるといいのではないかと感じました。これから東北学などの地域学についてもっと理解と勉強をふかめなくてはと思いました。

私自身、白神山地を対象地として持ちつつも、内向きにならず、いろいろな分野の研究者、地域の方々、行政の方々と外側にオープンに勉強し、活動していかなくてはならないと思います。

 

白神クラブでは、白神山地や自然遺産に興味のある人を募集しています。
初心者も多いので、勉強会や簡単なトレッキングから始めています。
他分野の学群生、院生など幅広い参加があります。
興味のある方はぜひご連絡ください。

近々、目屋の方にスノートレッキングに行くことになっています。
マタギの方のお話も聞く予定です。
次回はその報告ができると思います。

日本ユネスコエコパークネットワーク会議に行ってきました

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こんにちは。筑波大世界遺産専攻外崎です。

2015年10月6日〜8日の日程で長野県山ノ内町志賀高原)で開かれた日本ユネスコエコパークネットワーク大会に参加してまいりました。

 

ユネスコエコパークは、英語ではBiosphere Reserveと言います。

ユネスコの人間と生物圏計画(通称:MAB計画)の中の一事業として実施されているもので、自然保護と持続可能な地域の利用を考え、自然と人間の共生を目指す地域のことです。

日本では、志賀高原、白山、大台ケ原・大峯山屋久島、綾、只見南アルプスの7地域が登録されています。

 

今回の大会では、このユネスコエコパークに登録されている7地域と登録を目指している地域の関係機関や団体が集まり、総会と、それぞれの情報や経験の共有を行いました。

 

志賀高原ユネスコエコパークの現地見学会では、好天のなか、紅葉の気持ち良い森の中と湿原を歩きました。

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世界遺産においても、ユネスコエコパークにおいても、管理体制への住民の参加が重視されています。

特にユネスコエコパークは住民や地域主体の制度として注目を集めています。

 

今回の大会では、地域からの熱意や思いが各参加者から感じられ、その情熱に圧倒されました。ユネスコエコパークは自然保護と同時に、地域活性化、地域の発展を目指す制度でもあります。住民や地域行政が主役となり、頑張っていきたいという意気込みの感じられる、いい大会でした。

 

また、白神山地の地域活性化や住民参加を考えていく上で、大変たくさんの勉強をさせていただきました。白神山地のことを中心に考えていく中でも、参考になることがたくさんありました。

秋田白神 仁鮒水沢スギ植物群落保護林と藤里町、権現の大銀杏

こんにちは。

秋田白神方面に行ってきました。

今回訪ねた場所は、仁鮒水沢(にぶなみずさわ)スギ植物群落保護林です。

 

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秋田県側の白神山地にはブナ林に隣接して、天然のスギ林が多く広がっていました。

 

世界遺産として認められた範囲には入っていませんが、白神山地地域と呼ばれる、約13万ヘクタールの地域(青森県鯵ヶ沢、深浦、西目屋、秋田県の藤里、八峰、能代を含む地域)の南側にはこうしたスギ林が隣接していたことがわかっています。

秋田県の白神地域はこの天然秋田杉を産出していた地域で、スギは米代川の流域に多く分布していたということです。切り出したスギは筏に組み、川を下して能代に集められ、能代の町は「木都」と呼ばれていました。秋田藩には「国の宝は山なり」という言葉があるくらい、大事にされてきたそうです。

 

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仁鮒水沢スギ植物群落保護林では、樹齢250年の天然杉を見ました。樹高は58メートルで日本一。林内は、まっすぐ伸びた天然秋田杉の巨木が約2,800本ほどあります。散策歩道が整備されているので歩きやすかったです。ゆっくり一周して約30分ほど。

ただし、場所は本当に山奥にありますので、入り口までめげずにたどり着いてください。

 

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もう一つ、藤里町の権現の大銀杏にも行ってみました。
藤里町白神山地世界遺産センター、もりの駅のすぐそばです。

 

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樹齢300年と言われる大きなイチョウで、弘法大師が箸を立てたものが成長してこのイチョウになったとの言い伝えがあります。昔から御神木として信仰を集めていたようです。県指定の天然記念物。
隣にはお堂があります。

とても大きな立派なイチョウで、青々と茂っていました。

このような白神山地地域で信仰を集めた場所などは文化的な遺産要素と言えると思います。

平成27年度 白神山地世界遺産地域連絡会議

昨日7月31日、弘前市白神山地世界遺産地域連絡会議があり、傍聴に行ってきました。

議題は各機関の白神山地に関する事業計画、ニホンジカ対策、入山利用に関する対応の報告などでした。

特にニホンジカ対策は白神山地世界遺産地域ではまだ見つかっていないものの、世界遺産地域に迫る勢いでシカの目撃が相次いでおり、急務となっています。
連絡会議では、カメラでの撮影などで監視を強化していくことで一致しました。
また、具体的に白神山地の周辺地域でのシカ対策が提示され、白神山地地域だけの話ではないこと、全国的なシカへの対処が進んでくれればと感じました。
世界遺産である以上、人類の遺産が荒れる可能性があることは他人事ではありません。白神山地を守るためにも、みんなに考えて欲しい問題です。


また、入山利用に関する対応では、秋田県青森県での入山禁止と規制の違いがあることについて科学委員会で科学的理由がないとの判断から、地域住民から意見を聞いてきたが、地域の総意が得られなかった、との報告でした。
地域住民のなかでは白神山地世界遺産になった当時からの入山利用への様々な意見があり、まだまとまった意見となっていないようです。
しかし地域連絡会議がこの問題について取り組みを進めないわけではなく、積極的に検討課題として扱い続けていくとの事でした。

入山利用という、住民が積極的に白神山地に関わる問題について、やっと話し合え、良い方向に結論がでるよう話し合いが続けられるようになってきたと感じました。
地域住民がどう白神山地と付き合うかは住民に決める権利があります。住民が積極的に話し合っていける状態になることを望みます。

今回の傍聴では、問題はありますが白神山地が良い方向に向かっていける素地があることが感じられました。

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世界遺産専攻 公開講座

みなさま こんにちは。佐伯です。

 

718日(土)、世界遺産専攻の公開講座で、「世界遺産と地域コミュニティー: 自然保護の視点から」というお話をさせていただきました。

http://nc.heritage.tsukuba.ac.jp/joceplubb-303/#_303

 

世界遺産保全の現場では、今、地域の人々の役割が重要視されています。わたしの発表では、自然遺産と地域コミュニティーの関係について、白神山地を含む日本の事例を中心に、お話しました。

 

当日、暑い中お越しくださり、熱心に耳を傾けてくださったみなさま、どうもありがとうございました。まだ議論がはじまったばかりのトピックですが、これからも、理解を深めていけたらと思っています。

 

〇当日の様子 (写真は、専攻事務の中仙道さんからいただきました。)

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一緒に模擬授業をしてくださった八木先生(右)です。世界遺産としての龍門石窟」というタイトルでのお話でした。質疑応答では、世界遺産と地域との関わりは、文化遺産の保存でも重要な視点とのコメントをいただきました。八木先生のスライドでは、本当に美しい仏像の写真が続き、専門外の私でも思わず見とれてしまうほどでした。

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講座で紹介した外崎さんの論文です。白神の自然と文化、これからも学んでゆきたいですね。

 

http://nc.heritage.tsukuba.ac.jp/master/download1/?action=cabinet_action_main_download&block_id=706&room_id=16&cabinet_id=3&file_id=65&upload_id=935

第1回トレッキングツアーで出会ったお花たちとまいまい

先日のトレッキングで出会ったお花とまいまいを紹介いたします。

 

まいまい

:クリイロキセルモドキ

ブナの木に登っていました。

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お花

エゾエンゴサク

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エンレイソウ

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キクザキイチゲ

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カタクリ

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サンカヨウ

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シラネアオイ

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:スミレサイシン

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森の中で出会うお花は小さくて可憐ですが、見つけた時の喜びは大きいです。